後戻りできない治療を行う時は
後戻り出来ない治療を行う時は、私は『迷ったらやらない』のを原則にしています。
虫歯の治療のために歯を削る、歯の神経をとる、歯を抜くなどという治療は緊急を要することはあまりありませんので、迷うような場合には確信が持てる時期まで待てば良いと思っています。勿論、いつまでも痛みや腫れが治まらないのはかないませんので、症状を抑える治療はすぐに実行しての話です。
『迷ったらやらない』というのは、患者さんが迷ったらやらないという意味です。
歯を抜く治療について
1本1本が大切な歯ですから、歯を抜かずに問題が解決できるなら歯は抜きたくありません。先ず、歯を残すために最大限の努力を試みたいと思っています。
歯を残しておいた方が害が大きい、もしくは歯を抜いた方が利益が大きいと思われる時には抜歯をすることになります。害が大きいというのは、その歯が原因で痛みや腫れをくり返している、周りの歯や骨に悪影響を及ぼす、離れた皮膚や臓器に悪影響を及ぼすなどで、残念ながらそれが歯を抜く以外の方法では根本的に治せない場合があります。
抜く抜かないの結論より、その歯とその歯の周りの状況、考えられる治療法などについて良く理解していただきたいと思っています。
歯を抜かない治療はいつでも可能です。でも、それがいつも最良とは限りません。
虫歯の治療で歯を削ることについて
まだ穴の開いていない初期の虫歯は、条件が整えばそれ以上進まないことや治ってしまうことがあります。穴の開いてしまった虫歯は、通常は進行を止めることが難しいので、虫歯の部分(この部分はばい菌のかたまりです)を削り取って詰め物なりかぶせものをすることになります。
虫歯の進む速さには個人差があります。速く進む人では初期の小さな虫歯が半年間で大きな穴になる程までに進んでしまいますが、進むのが遅い人では、数年間、虫歯はあるけれどもほとんど進まないということもあります。
長くおつきあいをしている患者さんでしたら、何年か前の資料と比較して、その虫歯がだんだん大きくなってきたのか変わらないのかなど虫歯の進む速さが分かりますので、手を付けるべきかもう少し様子を見るべきかの判断がしやすくなります。
詰め物やかぶせものをした歯の方が丈夫で虫歯になりにくくなるのでしたらあまり迷うことなく治療を行っていくのですが、残念ながらそうとはいきません。詰めた材料やかぶせた材料は虫歯になりませんが残っている歯の部分は、見えない部分でも虫歯になります。
拡大して見てみますと詰め物やかぶせものと歯との境目は段差になっています。特に精度の悪い詰め物やかぶせものはこの段差が大きくなっていて、その境目は何もしていない歯に比べて虫歯になりやすい所となってしまいます。このことは、精度の悪い段差の大きい詰め物やかぶせものをすると、治療前に比べて口の中のばい菌の数がかえって増えてしまうという事実からも理解できます。
虫歯は、初期のうちはいきなり削らずにできるだけ進まないように手をつくし、削る治療を行う場合はなるべくきちんとやるのが良いと思います。
歯の神経を取る治療について
虫歯が進みますと、ばい菌が歯の神経の中まで入り炎症を起こしながらさらに中へと進み骨の方にまで拡がっていきます。歯の神経を取った歯と取らない歯では、一般に歯の神経を取らない方が長もちをしますので、可能ならば歯の神経は取らずにすませたいものです。しかし、ばい菌がいったん神経の中に入ってしまいますと病気の進行を止めるのが難しく、仕方なく(ばい菌と一緒に)歯の神経を取り、消毒し、再びばい菌が増えないように薬で封鎖します。通常、虫歯が原因で強い痛みが出ている場合にはもう既にばい菌が神経の中まで入ってしまったと考えていいと思います。
歯槽膿漏がひどく進んだ場合にも、虫歯が全く無いのに、ばい菌が歯の神経の中まで入っていってしまうことがあります。この場合にも神経を取る処置を行います。
その他、かぶせものをするためにやむを得ず神経を取るような場合もあります。
ただ、痛みが出たからと言ってもばい菌が原因でない場合もあります。例えば、夜寝ている間に歯ぎしり・かみしめを行ったために、特に力の強くかかる歯が痛くなることなどもあります。このような場合には、すぐに神経を取ったりせずに、しばらく様子を見てからということになります。